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 「デザイン」とは、人間の創造力、構想力、実行力をもって、生活、産業、環境に働きかけ、それらの改善を図る営みを指します。つまり、人間のクオリティ・オブ・ライフの向上という目的のもとに、創造力と構想力を駆使して、私たちの周囲に働きかけ、諸要素を意図的に調整・適合する行為を総称して「デザイン」と呼ぶ事ができます。これまでのサイエンス指向の理工学ではデザインをえてして軽視する傾向がありましたが、テクノロジーの観点から見れば、まさにこのデザインこそが工学的営みの本質であり、原点であると言えます。新組織ではこうした認識に基づいて、具体的な「モノづくり」に取り組む姿勢を重視し、クリエイティビティが要求され、構成要素を統合してより優れたデザインのartifact(人工物)を開発する科学技術の諸分野を、1つの専攻領域として総合しています。


 21世紀の科学技術には、機能性や利便性を満たしていると同時に、地球環境に対する危険性、あるいはリサイクルの容易さといった点でのデザインの卓越性がますます求められてくるでしょう。20世紀の科学技術に不備だった点はまさにこの点です。科学技術というサブシステムを、エコシステムというトータルシステムにうまく接合できず、地球環境問題、人口過剰、資源枯渇などを起こしてしまったと言えるのです。21世紀の科学技術には、ともすればアドホックな現行の要素技術を、より広いコンテクストにおいて位置づけ直して、よりジェネリックな工学システムへと最適化し、生活や産業、国際社会あるいは文明のあり方を結ぶ、「重要な絆」となる役割がますます期待されているのです。産業社会ではともすれば生産性・経済性優先の中で科学技術本来の重要性が見失われがちなだけに、大学がそのあり方を提案し先導する意義は深いと考えています。


 サイエンスとテクノロジーは、同じ道具立てを利用しますが、目的は異にしています。科学が現象を解析(アナリシス)し、解析結果から現象をモデル化する方向に強く働くのに対して、工学の目的はむしろその解析結果やモデルに基づいて、社会的に有用な人工物を設計(シンセシス)し、あるいは統合(インテグレーション)して、具体的な課題解決に結びつける点に主眼があります。現在の学問としての理工学では、いわば技術の「科学化」が進み、具体的な「モノづくりが」充分に行われていない懸念があります。そこで、工学の本流である創造的活動を重視した研究教育を展開し、広く社会の発展に貢献できる人工物および工学システムを開発することを期待して、総合デザイン工学専攻を開設しました。


 私たちがつくろうとしているものは、個別の人工物にとどまらず、それらを最適に組み合わせた工学システムです。これまで分野別に展開されてきたため、見方によってはバラバラな要素技術開発に終わっていた諸活動を、広く工学的営為全般の中で改めて位置づけ直し、さらには利用者や環境への影響を考慮することで、いわばテクノロジー自体のより望ましい活動形態をデザインしようというものです。それがデザイン工学に「総合」を冠した狙いです。研究教育では、総合デザイン工学がめざす基本概念や必要なアプローチ・思考方法を各研究領域で求められている具体的な課題との関係で理解してもらうと同時に、各研究領域において技術開発に実際に取り組むことに主眼を置いています。さらに、未開拓の領域に積極的に挑戦してもらう狙いから、先端的・萌芽的な研究分野を紹介する科目を充実させています。